ゴスロリ世界に影響を与えた耽美と凄惨の世界「伯爵カイン」

「耽美」という言葉をご存知でしょうか。
国語辞書などにおいては「美を最高の価値として、ひたすらその世界に心を傾け陶酔すること」と説明されている言葉です。
その言葉の通り、この作品は隅から隅まであますことなく陶酔すべき美しさと残酷さで埋め尽くされています。
「花とゆめ」連載当時、少女たちにそんな世界への憧れを抱かせた作品、「伯爵カインシリーズ」のご紹介です。

彩られるゴシックとロリータ

シリーズが初めて幕を開けてから既に20年が経過しているとは思えないほど、細やかで美しい画風と煌びやかでありながら血の香りを漂わせる世界観は、現在のゴシック・アンド・ロリータに多大な影響を与えたと言っても過言ではありません。
19世紀後半、ヴィクトリア朝時代のイギリス、ロンドンを主な舞台にしたこの作品。
その装飾過剰さや過度の上品さを連想させる時代背景にふさわしく、主人公カイン・C・ハーグリーヴスはシリーズタイトルの示す通り大貴族にして伯爵家の若き当主という設定です。
その設定故に、贅沢さを極めた社交界の雰囲気や煌びやかなドレス、貴族たちの優雅な生活もおおく描写されることとなりました。
ちょうど華美なものに憧れる傾向にある年頃の少女たちは、作品内の美しい世界に夢中になったのです。
ロココ時代、ヴィクトリア時代の服装を基調としたゴシック・アンド・ロリータ文化を愛する世代や、同様の服飾企業のデザインにも多大な影響を与え、そして与えられた作品と言っていいかもしれません。

アクセントは少女マンガとしては異例の凄惨さ

しかしこの作品の面白さは、そんなおとぎ話の王子様然とした部分ではありません。むしろミステリーの要素すら感じさせる血生臭さにこそ魅力を感じた読者が多くいました。
主人公であるカインは「血のハーグリーヴス家」とも呼ばれるほど、英国の凄惨な歴史の裏で活躍してきたという家柄の出身。地下には大量の毒薬が眠り、その管理を任されているという設定です。
禍々しいものを感じさせる設定ですが、美しい画面の中ではその恐ろしさはむしろ見事なアクセントとなっています。
シリーズ内の「赤い羊の刻印」で登場する「切り裂きジャック」事件などに代表される凄惨な殺人事件シーンでは、もはやホラー作品と見まがうばかりの描写も散見されますが、やはり同様に作品内の耽美な描写とのメリハリが際立つ結果となっています。
マザーグースや不思議の国のアリスなど、日本人にも馴染みのある題材をモチーフとして用いていることが多くあり、読者が作品に共感しやすい工夫もされています。
マザーグースに至っては元々がその歌詞の残酷さは物議を醸すことも多く、凄惨な時代背景を反映したものとして研究も進んでいるものなので、こういった作品に引用されていても違和感を覚えません。
見目麗しいキャラクター達がマザーグースやアリスになぞらえられた殺人事件を解明していく展開は、爽快さとはまた違う感覚を味あわせてくれます。
血の表現や精神的に追い詰められるような描写も見られますが、それを許容できる方は是非ご一読を。幼い少女がお姫様に憧れるような恍惚さと、胸に迫る切なさや怖気立つ恐怖をも一時に楽しめます。

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