原爆から生き延びた人々の生活を描く名作『夕凪の街 桜の国』感想

今回紹介する作品は『夕凪の街 桜の国』。
2004年に発売されたこうの史代による漫画作品です。

広島に投下された原爆から生き延びるも、その後遺症におかされた人々の生活を描く名作です。
可愛らしい素朴な絵柄で描かれる戦争の凄惨な描写は、戦争を体験していない私たちにも少なからず衝撃を与えてくれます。

夕凪の街

本作は大きく二部に分かれており、単行本には『夕凪の街』『桜の街(一)』『桜の街(二)』の三編が収録されています。
『夕凪の街』の舞台となるのは、広島の原爆スラムと呼ばれる、通称”夕凪の街”。投下された原爆に被曝しつつも生き延びた人々の生活を淡々と描いています。

物語の主人公は平野皆実という原爆症を患った女性。かわいらしい広島弁の女性です。原爆の投下から十年が経っても元気で、貧乏ながらも仕事に精を出しているようです。

人並みに仕事をし、人並みに恋をし、好きな男性ともなかなか上手くいっているようですが、彼女の心の奥底に残っている被爆体験が他人との距離を詰めることを拒否します。

彼女の身体には、被爆者である証のようにアザのような火傷の跡が残っています。

被爆者というのは、被曝をしていない人間から見れば未知の生物のようなもので、被曝をしていない人間は危うきには近寄らずという気持ちを込めて、被爆者に対して「死ねばいい」「近寄らないでほしい」というような感情を抱いています。

ひどい話ですが、被曝していない人々の気持ちもわからなくはありません。
現代でいうエボラ出血熱患者などへの扱いにも近しいものを感じます。

ネタバレになってしまうので多くは語れませんが、30ページにも満たない短い物語で、ここまで人の心を動かす漫画というのは他にはないと思います。

この短い物語を読むだけで充分「もう二度と戦争を起こしてはいけない」という気持ちになります。

桜の街

第二部『桜の街』の主人公は石川七波、『桜の街(一)』では小学生、『桜の街(二)』では28歳。『夕凪の街』の主人公だった皆実の姪です。男勝りで快活で、少年野球のチームで野球をしていた経験もあります。

『桜の街(二)』で、大人になった七波は父を尾行しているうちに広島に辿り着きます。
そこで目にする過去と現在の交錯した光景を目にして、彼女は自分の考え方を改め、ほんのすこし成長する…そんな話です。

広島弁の女性の可愛らしさ、絵柄のかわいらしさで中和されてはいますがかなり重い物語です。
しかし、戦争を知らない世代こそ読むべき作品だとも思います。
単行本全一巻。
是非、一度読んでみてください。

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